☆ 「読む」・・・お経を学ぶ(1)
☆ 『讃仏偈(さんぶつげ)』について学びましょう。
『讃仏偈』は、浄土三部経(『仏説無量寿経』『仏説観無量寿経』
『仏説阿弥陀経』のうち、最も重要な『仏説無量寿経』の中にあります。
『仏説無量寿経』は、宗祖の親鸞聖人(しんらんしょうにん)が
「真実の教え」と讃えられた経典です。阿弥陀仏の浄土建立と
私たち凡夫が極楽浄土に往生できるいわれが説かれています。
阿弥陀仏は、阿弥陀仏が成仏する以前の法蔵菩薩(ほうぞうぼさつ)
であった時に、その師仏であった世自在王仏(せじざいおうぶつ)のもとで、
本願をおこされました。
その時、法蔵菩薩が師仏の世自在王仏の気高い姿を仰いで、
そのお徳を讃え、師仏に向かって自分の信念と願いを述べられました。
法蔵菩薩にとって、素晴らしい師仏との出会いとは、
まさしく素晴らしい「仏法」との出会いだったのです。
その出会いの驚きと喜びを光に満ちた、み仏への讃歌として
表現されたのが、この『讃仏偈』なのです。
『讃仏偈』の経文 | 書き下し文 | 現代語訳文と語句の説明 |
こうげんぎぎ 光顔巍巍 |
光顔、巍巍として、 | 世尊のお顔は気高く輝き、 |
いじんむごく 威神無極 |
威神、極まりなし。 | その神々しいお姿は何よりも尊い。 |
にょぜえんみょう 如是焔明 |
かくのごときの焔明、 | その光明には 「焔明」→光明 |
むよとうしゃ 無與等者 |
ともに等しきものなし。 | 何ものにも及ぶことなく、 |
にちげつまに 日月摩尼 |
日月、摩尼 | 太陽や月の光も 「摩尼」→サンスクリット語マニの音写、 珠玉のこと |
しゅこうえんにょう 珠光焔耀 |
珠光の焔耀も、 | 宝玉の輝きも、 |
かいしつおんぺい 皆悉隠蔽 |
みな、ことごとく隠蔽せら れて、 |
その前にはすべて失われ、 |
ゆうにゃくじゅもく 猶若聚墨 |
なお、聚墨のごとし。 | まるで墨のかたまりのようである。 「聚墨」→墨のかたまり |
にょらいようげん 如来容顔 |
如来の容顔は、 | まことにみ仏のお顔は、 |
ちょうせむりん 超世無倫 |
世に超えて倫(たぐい)な し。 |
世に超えてすぐれてくらべようもなく、 |
しょうがくだいおん 正覺大音 |
正覺の大音 | さとりの声は高らかに、 |
こうるじっぽう 響流十方 |
響き十方に流る。 | すべての世界に響きわたる。 |
かいもんしょうじん 戒聞精進 |
戒と聞と精進と | 持戒と多聞と精進と 「戒聞」→持戒(戒を保つこと)・多聞 (よく法を聞いて学ぶこと) |
さんまいちえ 三昧智慧 |
三昧と智慧との | 禅定と智慧、 「三昧」→サンスクリット語サマーディの 音写、禅定(精神を集中させること) |
いとくむりょ 威徳無侶 |
威徳は、侶(ともがら)なくし て |
これらの威徳は並ぶものがなく、 |
しゅしょうけう 殊勝希有 |
殊勝にして希有なり。 | とりわけすぐれて世にまれである。 |
じんたいぜんねん 深諦善念 |
深くあきらかに、よく | さまざまな仏がたの教えの海に深く |
しょぶつほっかい 諸佛法海 |
諸佛の法海を念じて、 | 明らかに思いをこらし、 |
ぐじんじんのう 窮深盡奥 |
深きを窮め奥を盡くして | その奥底を限りなく |
くごがいたい 究其涯底 |
その涯底を究む。 | 深くきわめ尽くしておいでになる。 |
むみょうよくぬ 無明欲怒 |
無明と欲と怒りとは、 | 愚かさやむさぼりや怒りなど 無明(真理に対する無知)と貪欲と瞋恚 (怒り)は三毒の煩悩を指す |
せそんようむ 世尊永無 |
世尊に永くましまさず。 | 世尊にはまったくなく、 |
にんのしし 人雄師子 |
人雄獅子にして | 人の世にあって獅子のように雄々しい 方であり 「人雄師子」→人中の雄者で獅子のよ うな方、仏を讃嘆する語 |
じんとくむりょう 神徳無量 |
神徳無量なり。 | はかり知れないすぐれた功徳をそなえ ておいでになる。 |
くくんこうだい 功勲廣大 |
功勲廣大にして、 | その功徳はとても広大であり、 |
ちえじんみょう 智慧深妙 |
智慧深妙なり。 | 智慧もまた深くすぐれ、 |
こうみょういそう 光明威相 |
光明の威相は、 | 輝く光のお力は、 |
しんどうだいせん 震動大千 |
大千を震動す。 | 世界中を震わせる。 「大千」→古代インド人の世界観による 全宇宙 |
がんがさぶつ 願我作佛 |
願はくは、われ佛とならん に、 |
願わくは、わたしも仏となり、 |
さいしょうほうおう 齋聖法王 |
聖法王に斉(ひと)しく、 | この世自在王仏のように 「聖法王」→ここでは、法蔵菩薩(阿弥 陀仏に成る前の菩薩)の師である世自 在王仏のこと |
かどしょうじ 過度生死 |
生死を過度して、 | 迷いの人々をすべて救い、 |
みふげだつ 靡不解脱 |
解脱せざることなからしめ ん。 |
さとりの世界に至らせたい。 |
ふせじょうい 布施調意 |
布施・調意・ | 布施と調意と 「調意」→布施行を修めて惜しみ貪る 心を調伏すること |
かいにんしょうじん 戒忍精進 |
戒・忍・精進、 | 持戒と忍辱(にんにく)と精進、 |
にょぜさんまい 如是三昧 |
かくのごときの三昧、 | このような禅定と |
ちえいじょう 智慧為上 |
智慧上(すぐ)れたりとせ ん。 |
智慧を修めて、この上なくすぐれたもの としよう 布施(財施・法施・無畏施) 持戒(戒律を守ること) 忍辱(迫害に耐え忍ぶこと) 精進(修行に努力すること) 禅定(心を安定させること) 智慧(真実の智を得ること)の六種は、 「六波羅蜜行(ろっぱらみつぎょう)」と いい、大乗仏教の菩薩が実践すべき 徳目 |
ごせいとくぶつ 吾誓得佛 |
われ誓ふ、佛を得たらん に、 |
わたしは誓う、仏となるときには、 |
ふぎょうしがん 普行此願 |
あまねくこの願を行じて、 | 必ずこの願を果たしとげ、 |
いっさいくく 一切恐懼 |
一切の恐懼(の衆生)に | 生死の苦におののくすべての人々に |
いさだいあん 為作大安 |
ために大安をなさん。 | 大きな安らぎを与えよう。 |
けしうぶつ 假使有佛 |
たとひ佛ましまして、 | たとえ多くの仏がたがおいでになり、 |
ひゃくせんのくまん 百千億萬 |
百千億萬の | その数は |
むりょうだいしょう 無量大聖 |
無量の大聖、 | ガンジス河の砂のように数限りないとし ても、 「大聖』→仏陀のこと |
しゅにょごうじゃ 數如恒沙 |
数恒沙のごとくならんに | それらすべての仏がたを 「恒沙」→「恒河沙」の略、「恒」はガン ガーの音写で、インドのガンジス河のこ と、「沙」は砂のこと |
くよういっさい 供養一切 |
一切のこれらの | 残らず供養したてまつるより、 |
しとうしょぶつ 斯等諸佛 |
諸佛を供養せんよりは | 固い決意でさとりを求め、 |
ふにょぐどう 不如求道 |
道を求めて、 | ひるまずひたすら励む方が、 |
けんしょうふぎゃく 堅正不却 |
堅正にして却(しりぞ)か ざるにはしかじ。 |
功徳はさらにまさるであろう。 |
ひにょごうじゃ 譬如恒沙 |
たとへば恒沙のごときの | ガンジス河の砂の数ほどの |
しょぶつせかい 諸佛世界 |
諸佛の世界、 | 仏がたの世界があり、 |
ぶふかげ 復不可計 |
また計(かぞ)ふべからざ る |
はかり知れないほどの |
むしゅせつど 無数刹土 |
無数の刹土あらんに | 数限りない国々があるとしても 「刹土」→「刹」はサンスクリット語「クシ ェートラ」の音写の略で、国土のこと |
こうみょうしつしょう 光明悉照 |
光明ことごとく照らして | わたしの光明はそのすべてを照らして |
へんししょこく 遍此諸國 |
このもろもろの國に遍じ | 至らないところがないように、 |
にょぜしょうじん 如是精進 |
かくのごとく精進にして | おこたることなく励んで、 |
いじんなんりょう 威神難量 |
威神量りがたからん。 | すぐれた光明をそなえたい。 |
りょうがさぶつ 令我作佛 |
われ佛とならんに、 | わたしが仏になるときは、 |
こくどだいいち 國土第一 |
國土をして第一ならしめ ん。 |
国土をもっとも尊いものにしよう。 |
ごしゅきみょう 其衆奇妙 |
その衆、奇妙にして | 住む人々は徳が高く、 |
どうじょうちょうぜつ 道場超絶 |
道場超絶ならん。 | さとりの場も超えすぐれて、 「道場」→悟りの場所 |
こくにょないおん 國如泥涅 「泥涅(ないおん)」の 「涅」は経文の字とは異な ります。パソコンの漢字に ないので、この字を代用 しています。ご了承くださ い。 |
國、泥涅(ないおん)の ごとくならん。 |
涅槃の世界そのもののように、 「泥涅」→「涅槃(ねはん)」と同じく、 サンスクリット語ニルヴァーナの音写 |
にむとうそう 而無等雙 |
しかも等しく雙(なら)ぶ ものなからしめん。 |
並ぶものなくすぐれた国にしよう。 |
がとうあいみん 我當哀愍 |
われまさに哀愍して、 | わたしは哀れみの心をもって、 |
どだついっさい 度脱一切 |
一切を度脱すべし。 | すべての人々を救いたい。 |
じっぽうらいしょう 十方来生 |
十方より来生せんもの、 | さまざまな国からわたしの国に生まれ たいと思うものは、 |
しんねつしょうじょう 心悦清浄 |
心悦清浄にして、 | みな喜びに満ちた清らかな心となり、 |
いとうがこく 已到我國 |
すでにわが國に到らば | わたしの国に生まれたなら、 |
けらくあんのん 快楽安穏 |
快楽安穏ならん。 | みな快く安らかにさせよう。 |
こうぶつしんみょう 幸佛信明 |
幸(ねが)はくは佛(世自 在王佛)、信明したまへ、 |
願わくは、師の仏よ、この志を認めたま え。 「信明」→「信」は誠信、「明」は証明。ま ことにして偽りなきことを証明すること。 |
ぜがしんしょう 是我真證 |
これわが真證なり。 | それこそわたしにとってまことの証であ る。 「真證」→真実の証人 |
ほつがんのひ 發願於彼 |
願を發(おこ)して、かしこ にして |
わたしはこのように願をたて、 |
りきしょうしょよく 力精所欲 |
所欲を力精せん。 | 必ず果たしとげないではおかない。 「力精」→努力精進 |
じっぽうせそん 十方世尊 |
十方の世尊、 | さまざまな仏がたはみな、 |
ちえむげ 智慧無礙 |
智慧無礙にまします。 | 完全な智慧をそなえておいでになる。 「無礙」→さわり(障害)がないこと |
じょうりょうしそん 常令此尊 |
つねにこの尊をして、 | いつもこの仏がたに、 |
ちがしんぎょう 知我心行 |
わが心行を知らしめん。 | わたしの志を心にとどめていただこう。 「心行」→ここでは、法蔵菩薩の願心の こと |
けりょうしんし 假令身止 しょくどくちゅう 諸苦毒中 |
たとひ身をもろもろの苦毒 のうちに止(お)くとも、 |
たとえどんな苦難にこの身を沈めて も、 |
がぎょうしょうじん 我行精進 |
わが行、精進にして、 | さとりを求めて耐え忍び、修行に励ん で |
にんじゅうふけ 忍終不悔 |
忍びてつひに悔いじ。 | 決して悔いることはない。 |
『讃仏偈』の経文はここま で。以下は念仏と回向文 |
勤行としてお勤めくださ い。 |
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なまんだぶ 南無阿彌陀佛 |
阿彌陀佛に南無せよ。 | 阿弥陀仏にまかせよ、必ず救う。(阿弥 陀仏からの喚び声) 「阿弥陀仏」の「阿弥陀」とは「無量の」 という意味のサンスクリット語「アミタ (amita)」の音写語。 「仏」は「仏陀」の略語で、「(真理に)目 覚めた者」を意味するサンスクリット語 「ブッダ(Buddha)」の音写語。 |
なまんだぶ 南無阿彌陀佛 |
阿彌陀佛に南無せん。 | 阿弥陀仏におまかせします、信じます。 (信者からの感謝の声) 「阿弥陀仏」は、「無量の光明」を意味 するサンスクリット語「アミターバ」と「無 量の寿命」を意味するサンスクリット語 「アミターユス」の二つの特長を持つ仏 陀(真理に目覚めた者)。 「南無」は、サンスクリット語「ナマス (namas)またはナモ(namo)」の音写語 で、「帰依する」「信順する」という意 味。 |
なまんだぶ 南無阿彌陀佛 |
阿彌陀佛に南無せよ。 | 念仏は、今日では一般に「南無阿弥陀 仏」と称えること。もともとインドではこ の称名念仏だけを指すものではない。 「念仏」とは、サンスクリット語「ブッダ・ アヌスムリティ」、仏を心の中で思念す ること。 |
なまんだぶ 南無阿彌陀佛 |
阿彌陀佛に南無せん。 | その後、仏の姿や特徴をしっかりと観 察し思念する観念の念仏のこともいう。 さらには口に仏の名を称えることにより 仏を実感する口称念仏(くしょうねんぶ つ)という実践行も意味するようになっ た。 |
なまんだぶ 南無阿彌陀佛 |
阿彌陀佛に南無せよ。 | 宗祖の親鸞聖人は、「南無」の意味は 「帰命する」であり、「本願招喚(ほんが んしょうかん)の勅命」といわれた。招 喚とは、「念仏して浄土に往生しなさ い」と阿弥陀仏自身が招き喚んでおら れるということ。すなわち、阿弥陀仏に 帰依することも、実は仏の働きかけに よる(他力)と示された。「南無阿弥陀 仏」の六字全体を仏の「名号(みょうご う)」として本尊とし、、名号に私たち凡 夫が往生成仏できる功徳が具わってい る、名号のいわれを聞信すべきである とされた。 |
なまんだぶ 南無阿彌陀佛 |
阿彌陀佛に南無せん。 | 蓮如上人(本願寺第八代宗主)は、「信 心正因」(阿弥陀仏の本願を信じること が往生成仏の正しい原因)「称名報恩」 (念仏を称えるのは阿弥陀仏の救いに 対するご恩に報いる感謝の行為)を強 調された。 「南無阿弥陀仏」は「ナモアミダブツ」と 称えたり、時には「ナマンダブ」と称え る。 |
がんにしくどく 願以此功徳 |
願はくは、この功徳を以て | この回向文は、善導大師(浄土真宗の 七高僧の第五祖、紀元七世紀頃在世 の中国浄土教の大成者)の著作『観経 疏(かんぎょうしょ)』の「玄義文(げんぎ ぶん)」の序の偈文。 願わくは、この尊い功徳をもって |
びょうどうせいっさい 平等施一切 |
平等に一切に施し、 | すべてのものに与え |
どうほつぼだいしん 同發菩提心 |
同じく菩提心を發し、 | もろともに信心をおこして |
おうじょうあんらっこく 往生安楽國 |
安楽國に往生せん。 | 安楽国に往生しよう。 |
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